楽曲解説第4弾は、秦基博さんの「鱗」でございます。
先日、THE FIRST TAKEで生演奏が公開されて、大注目の楽曲ですね。
震災の頃に投稿された秦さん本人の弾き語り動画も素晴らしかったですが、音質的にも秦さん本人の歌唱的にも、さらにレベルアップした動画となっておりました。
一度ご視聴されることを強くお勧めします!記事の最後にリンクを貼っておきますので是非!
原曲キーで演奏する場合、カポを4フレットに装着しましょう。
ただ原曲キーは非常に高いです。
秦基博さんの歌唱力はバケモノレベルなので、高すぎて苦しい!という人は、カポを下げれば4つまでキーを下げることができますから、自分に合ったキーで演奏することをおすすめします。
YouTubeチャンネルに解説動画がありますので参考にしてみてください。
そちらの楽譜とこのブログの画像を見比べながら、コピーしてみてください。
色んなJAZZコードを覚えられる、レベルアップに最適な曲ですよ。
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目次
イントロ
イントロのコード進行
- Dsus4 | D | Dadd9 | D | Dsus4 | D | Dadd9 | D
爽やかな印象のコードから始まります。青春時代に風が吹いているような、遠い目をしているような印象を感じます。
演奏のポイントとしては、ストロークのリズムパターンに気をつけると良いでしょう。
ちゃーんちゃーんちゃんちゃんかチャカチャカと、口ずさめるようになれば、それを手で表現するだけです。まずはリズムを歌えるようにするのがコツです。
Aメロ
Aメロのコード進行
- Dsus4 | D | Dadd9 | D | Dsus4 | D | Dadd9 | D
- Em7 | Dadd/G
- Dsus4 | D | Dadd9 | D | Dsus4 | D | Dadd9 | D
- Em7 | Dadd9/G | Dsus4 | D | Dadd9 | D
Aメロのポイント
イントロとほとんど同じコードの中に、Em7とDadd9/Gが入ります。
Dadd9、Em7、Dadd9/Gには、ある共通点があります。
それは、ずっと1弦の開放弦が鳴っているということです。
音としてはずっとE、ミの音が鳴っているのですが、ベース音が変わるとコードにもたらす役割が変わります。
コードのとても面白い、魅力的な部分だと思います。
私たちの普段の生活も、自分という同じ人間ですが、属しているコミュニティ、接している人が変われば、役割やキャラクターが変わりますよね。
それと同じで、音も他のどの音と組み合わされるかによって役割が変わるのです。7になったり9になったり。
演奏のポイントです。気づいたでしょうか。薬指がずーっと2弦の3フレットに置かれっぱなしということに。
コードを押さえるフォームをほとんど変えずに演奏しています。なんとBメロでBm7が出てくるまでこの薬指をキープしています。
弾いてみるとわかりますが、左手が全く疲れません!
初見では果てしなくテンションコードが続いてだる〜って感じますが、テンションが入ったほうが逆に押さえるのは楽やん!ってなりますね。
これぞ秦基博流超省エネ奏法。
それから、イントロと同じくリズムが重要になります。
と言ってもギターではなく、ボーカルのリズムです。この曲のAメロの歌のリズムは、はっきり言って鬼畜レベルに難しいです!
その分、リズムをしっかり歌えるようになると、ゆらゆらした心の迷いや、会いに行く決心が付かず優柔不断な様子を繊細に表現できます。
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Bメロ
Bメロのコード進行
- Em7 | Dadd9/G | Dadd9 | Asus4
- Em7 | Dadd9/G | Bm7 | Aadd9 | Dadd/G
Bメロのポイント
Aメロとは打って変わって分かりやすいリズムです。
小節の3、 4拍目からフレーズが始まるリズムとなっており、これまたふわふわとした風のように感じます。
ところが、「ねえ 届けなくちゃ」のところだけ、Bm7というそれまで出てこなかったコードとともに、シンコペーションという拍の頭より少し突っ込んで入るリズムが採用されています。
ここでおそらく少しだけ前向きな決心をしたのでしょう。歌詞の語気も少し強めになっていますね。
演奏のポイントとしては、THE FIRST TAKEの演奏ではカッティングをしています。
フワーっとしたリズムの中にカッティングでアクセントを入れることで、AメロBメロとずっと同じのっぺりした演奏にならず、飽きずに聴くことができます。
サビ前のDadd9/Gも、これからサビですよ!という感じを醸し出すようにカッティングしましょう。
サビ
サビのコード進行
- Dadd9 | Dadd9/G | A7 | A#dim | Bm7
- G(13) | F#m7 | Em7 | Asus4
- Dadd9 | Dadd9/G | A7 | A#dim | Bm7
- G(13) | F#m7 | Em7 | Asus4
サビのポイント
頭のOh〜の歌い方ですが、力強く「うおおおお!」って歌っては絶対にダメですよ笑
絞り出すような、ようやく会いにいく決心がついたような、「Oh…」って感じで歌いましょう。
声量をアピールしよう!などという考えで叫び上げたらこの曲は台無しです。
ここで、歌詞とコードの関係性を見てみます。A#dim。
また出てきました、ディミニッシュコードです。前回の夜空ノムコウでも出てきましたね。
その時は、失恋を察する瞬間、プラスの感情からマイナスの感情へ変化するときにこのコードが出てきました。↓夜空ノムコウ解説↓
夜空ノムコウ 弾き語りギター講座 コードに秘められた感情の変化について
鱗では逆です。色々自分に言い訳してウジウジ迷っていたところから、会いにいく!と決心した瞬間にこのコードが瞬間的に入ります。
マイナスからプラスに感情が動くときにもこのコードは表現を豊かにしてくれます。
ここでも省エネ奏法発動ですね。A7からA#dimは人差し指をちょっと足すだけでコードチェンジできます。
アコギの難しい部分として、コードチェンジ時に音が途切れてしまうことが挙げられますが、この曲はそういうミスを最小限に抑えるよう工夫されているようにも感じます。
演奏のしやすさという面から見ても、よく考えられています。
それから、A7→A#dim→Bm7のように次のA→Bと行く間にディミニッシュコードを挟むことを、パッシングディミニッシュと言います。
経過する、経由するという意味のPassという英単語から来ています。音楽理論的にも正しい使われ方をしています。
感情、理論、演奏の3方面からアプローチしてなおかつ自分を表現している、本当に緻密に作られた楽曲であることがわかります。
ただパッシングディミニッシュを使っているのではありません。根拠、理由があってこのコード進行にしているのです。
このように、1つのものを複合的な視点で見る、ということはどんなことでも大切だと思います。どの視点から見ても、納得のいく理由、根拠を持ったものが、一流の人が作るものなのでしょう。
では最後まで読んでいただきありがとうございました。